「荏原の水素」の現在と未来

「荏原の水素」の現在と未来

ポンプのベンチャー企業としてスタートしてから110年あまり。これまでにさまざまな事業に進出し、現在は産業機械メーカとして世界に名を知られる存在となった荏原製作所。私たちの次なるチャレンジは「水素」と「宇宙」です。2022年には世界初の水素発電向け液体水素昇圧ポンプの開発に成功するなど、次の100年を目指した取り組みはすでに始まっています。

  • なぜ今、水素なのか

    かつては「環境の荏原」と呼ばれた当社。1980年代から2000年代にかけて太陽光発電、マイクロガスタービン、風力発電、燃料電池など新規市場への参入を次々と打ち出し、環境技術に熱心な企業として知られました。しかし当時は今ほど市場規模や社会ニーズも大きくなく、残念ながら継続性のあるビジネスには育ちませんでした。 もともと安心して暮らせる生活環境をつくるために、上下水道の整備を目的としたポンプ事業からスタートした会社です。その後時代がどれだけ移り変わっても、常に社会課題の解決に役立つ技術開発を目標に活動してきました。現在、水素はCO2フリーな次世代エネルギーとして世界的な注目を集めています。この水素関連の技術開発に、これまで当社が培った極低温下で流体を扱う技術や、半導体製造の現場で培った真空技術などが活かせます。既存事業が順調な今こそ積極的な投資を行い、世のため人のためになる事業を収益の柱に育てるべきではないのか。今回の水素事業はそんな想いを乗せて2021年に始まりました。

  • 荏原の水素はここが違う

    水素関連プロジェクトを統括する塚本は、荏原製作所の水素事業がもつ競争優位性について「『つくる・はこぶ・つかう』すべてのプロセスに関わっていること」だと話します。「例えば欧州では既存の天然ガス供給網を活用し、ガス状の水素をパイプラインで各地に運ぶことを前提とした開発が進められています。しかし日本のような小さな島国で、大量の水素を扱おうとすると輸入に頼らざるを得ません。その際、気体のまま運搬するとかなり非効率ですから、-253℃まで冷やして液体にする必要があります。この液化水素を貯蔵・運搬する『はこぶ』プロセスに、荏原製作所の極低温下で稼働するポンプやコンプレッサ技術が欠かせません。液化水素は密度が低いため、水を押し出すようなポンプとはまったく異なり、通常では考えられない速さで回転させなければ水素を供給できません。しかも-253℃という絶対零度に近い極低温下で作動させるために、システム全体の設計を見直す必要があります。これらの技術は水素発電など『つかう』プロセスにもなくてはならないものです。さらに当社は、廃プラスチックを再資源化するケミカルリサイクル技術を応用したり、メタンから水素と炭素を分離するなど、水素そのものを『つくる』プロセスにも関与しています。この『つくる』から『つかう』までをひとつの流れとして捉え全体最適を図ることで、国が目指す水素サプライチェーンの構築にさまざまな形で貢献できること。これは当社ならではといえる強みです。こうした特色ある事業を展開できているのは、『今見えていない技術にもどんどん挑戦していく』という企業風土によるところが大きいのではないか。私自身はそう考えています」(塚本)

  • 水素関連プロジェクトが
    なぜ航空宇宙?

    水素事業とともに航空宇宙事業も始まっています。その背景とは。
    「当社では新規事業創出コンペを定期的に開催しているのですが、2020年の同コンペにおいて『自社の回転機械技術を発展させ宇宙にロケットを飛ばす』という事業アイデアが優勝しました。荏原の宇宙事業はこれが発端ですね。まずは得意なポンプからはじめ、いつかはロケットそのものも自分たちで飛ばしてみたいという提案メンバーの熱い想いが推進力となっているプロジェクトです。今後の宇宙開発を考えた時、よりコンパクトで高性能、かつ低コストの燃料供給用ポンプの開発は必須です。ロケットエンジンの燃料は液化水素や液化メタンなどを用いますが、超高速で回転させなければエンジンに供給できません。こうした開発テーマに取り組む中で、ある時ロケットエンジン用のポンプ技術が水素事業と親和性が高いことに気づいたんですね。これは同じ組織でやったほうが相乗効果を期待できるのではないかと考えた結果、現在では水素と宇宙を同じ組織で扱っています」(塚本)

  • 荏原の航空宇宙プロジェクトが
    描く未来

    数名のエンジニアの宇宙への夢からはじまった航空宇宙プロジェクト。その現在地を聞きました。「かつて日本の宇宙開発は国家プロジェクトとして推進されましたが、近年はその一部を民間企業が担い、それを国が支援するという形に変わりつつあります。我々は現在ポンプ専門メーカとして、民間のロケットメーカや大学と連携して小型ロケットの開発に参加していますが、私が期待するアウトカムは大きく2つあります。ひとつは世界の情報格差を縮めること。超小型の人工衛星を格安で飛ばせる世界を実現することで、地球のどこにいても等しく情報が行き届くインフラづくりに貢献していきたいです。もうひとつは宇宙開発のボトルネックである輸送手段の拡充です。低コストでのロケット運用を実現すれば、より自由で活発な物資輸送が実現できます。こうした輸送には着陸時に姿勢を制御するための燃料噴射装置なども必要不可欠ですが、ここにも当社のポンプ技術が欠かせません。現在は要素技術開発レベルで不確定な部分も多いですが、2030〜2040年くらいには、次の荏原を支える事業に成長させたいと奮闘しています」(塚本)

水素と航空宇宙プロジェクトに
必要なのはこんな人材

最後に、プロジェクトメンバーに必要な資質について塚本に聞きました。
「ありきたりではありますが、今ある現実を疑い、試してみて、新しいものを生み出していく。そういう個の探究心による突破力はやっぱり必要ですね。もちろんひとりでやれることには限界があるので、チームで成果を出していくわけですが、今社内にある知見をすべて集めたとしても目指す未来にはきっとたどり着けない。前例や常識にとらわれない自由な発想が次々と生まれてくる組織をつくるために、キャリア採用においては多種多様な経験、知見、技術を集めることを特に重要視しています」
荏原グループのシナジーを連鎖的に生み出し、世界にまだない新しい価値を生み出していくプロジェクト。若いチームをまとめるリーダーの意気込みとは。「航空宇宙事業同様、私を含めた社内有志の提案を受けて始まった事業です。縁あって今は私がリーダーを務めていますが、社会のニーズと社内の機運が一致したまたとないチャンスだと感じています。グループ会社も含めた荏原の事業体すべての力を掛け算することで巨大なシナジーを生み出し、次の100年を支える事業に育てていきたいと考えています」

CP水素関連戦略ビジネスユニット 
統括部長
塚本 輝彰(ツカモト テルアキ)
技術士(総合技術監理部門・衛生工学部門)
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